キャンプをするようになってから、登山にも出合いました。
それまでの人生の中で登山と言えば、幼い頃に初日の出を見た地獄登山と(この記事をご参照ください)、高校入学直後の勉強合宿中に、精神を鍛えるという名目で実施された登山くらいしか記憶にありません。
つまり、苦しくて嫌な思い出とともにある登山でした。
大人になってからも、登山が趣味という方と出会う機会はありましたが、その楽しさに共感することもできず、私には縁のないものだと思っていました。
こんな私に登山のお誘い
ところがある日、職場の方から登山に誘われたのです。
私はキャンプを始めてまもなく仕事を変えて、全く違う業種で働くようになりました。
そこで、これまでと全く違うタイプの方々と知り合うことができ、この私にまさかの登山のお誘いです。
人選間違ってる! が第一印象。
いくらキャンプをしていると言っても、インドア大好きで何十年も生きてきて、体力も筋肉もスタミナも根性もない私です。さすがに無理だと最初はお断りしました。
それでも、「最初の印象が肝心なので、楽しい登山をプロデュースしますよ! 約束します! 体力がなくても大丈夫。フォローは任せてください!」と熱心に誘ってくださり、迷惑をかけるだろうと思いながらも、思い切ってお言葉に甘えてみたのでした。
最低限必要な、トレッキングシューズとソックス、ザックを揃えて、あとは筋肉のない私の足の代わりに頑張ってくれるサポートタイツを準備しました。(これはちょっといいお値段でしたが、今でも重宝しています。)
ウェアやハットは、キャンプで使っているものがトレッキング用だったので、そのまま着ることができました。
体育会系女子たちと朝から待ち合わせ
季節は11月。
ちょうどいい。
当日はお天気にも恵まれて、不安な気持ちとお弁当を抱えて待ち合わせ場所に向かいました。
一緒に登ってくださるのは、私よりひと回りほど若い、ザ・体育会系女子ふたり。
うちひとりは体育大学出身、トライアスロンの大会に出場するほどの体力の持ち主で、休みの日にはひとりでもあちこちの山に登っているとのこと。
時々「仕事前にひと登りしてきました!」なんていう日もあったし、「家からランニングしてきました!」とか、競輪選手のような姿で自転車を漕ぎ、颯爽と職場に現れる日もありました。
そんな方々を付き合わせて申し訳ない。それが本音。
でももう、私はこれまでと違う世界で、これまでと違う価値観の人たちに囲まれて日々を過ごし、登山という新しい世界の扉を開けて待ってくれている親切な人が目の前にいるのです。
なんとありがたいことなのでしょう。
中でも、私のカチコチの頭をぐっちゃぁ…とひねりつぶしてくれるのは、何と言っても「今、目の前にいる若さ溢れる女性ふたりが、仕事が休みの日に朝早くから集合して何をするかと言うと、山に登る。しかもそれをめちゃくちゃ楽しんでいる」という事実。
驚愕です。
自分がそれくらいの年齢の時、こんな健康的な遊び方をしたためしがあったでしょうか。
友達と会えば、理由もなくお酒を飲み、夜通し遊び倒すことが当たり前ではなかったか。
もしくは、夜遅くまでダラダラと起きて本を読んだり、借りてきた映画を見たりした後、空が白んできた頃にやっと気絶して、次の日をダメにしていなかったか。
それに比べて、見よ! この有意義な時間の使い方を!
健康的過ぎて眩しすぎるんだ!
…あまりの眩しさに立ち眩みを起こしかけたところで、登山口に到着。
準備運動なんて、私にとっては高校の体育の授業以来のことなのですが、体育会系女子たちは、まるで食後に歯磨きでもするかのように当たり前の動作で屈伸を始め、アキレス腱を伸ばし、肩を回し、号令をかけながら体をほぐすのです。
カルチャーショックの連続で、登る前から気を失いそうでした。
登り始めたら、ただただ楽しい
そんなこんなで、いよいよ登り始めました。
片道2時間ちょっとのコースを、私のペースに合わせてくださったので、もう少しかかった記憶がありますが、もう忘れてしまいました。
忘れてしまうくらい楽しくて、あっという間で、苦しくなんてなかったのです。
あんなに辛いものだと思っていた登山が。
自分の意志で登っているという大前提。
決してプレッシャーをかけられることのないぺース。
登り甲斐がありながらも、初級者向けの安心コース。
木に囲まれておらず、視界が開けて、いつまでも見晴らしの良い景色。
山頂から見下ろす海。
軽快に続くおしゃべり。
体育会系女子たちの、細やかな気遣いとフォロー。
ただただ、楽しい。
そして一番素敵だったのは、山頂での昼食!
これが登山を好きになった決め手だと言ってもいいくらい、その昼食がおいしかったのです。
食べたのは、カップラーメンと、ウィンナーと、肉まん。
どれも、行く途中のコンビニで、体育会系女子ふたりが選んでいるのを真似して買ったものでした。
お弁当を持ってきたものの、「山頂で食べるとおいしいんですよ~」という言葉に流されてみました。
山頂に到着すると、体育会系女子たちがザックから取り出したシングルバーナーでお湯を沸かし、ホットサンドメーカーでウィンナーを焼き、その油で肉まんを焼いてくれました。
慣れた手つきでテキパキと。
これが驚くほどにおいしくて、もうおいしくておいしくて、私の心はぶるぶる震えました。
小さな子どもと一緒に食事をしていると、普段はなかなかカップラーメンを食べる機会がなく、考えてみたら数年ぶりに食べたカップラーメンでした。
こんなにおいしいものだったとは。
しっかり体を動かして、山頂で食べる。
ただそれだけ。
でも、私にはこの数十年、ただそれだけの経験もなかったんだなぁと思うと感慨深い。
狭い世界の中で古い価値観にとらわれていたのかも。
いくつになっても新しい世界との出合いはあって、それを楽しめるのだと感じました。
それはどうやらキャンプに限らず。
それからは、夫と子どもたちと一緒に、家族で低山登山を楽しむようになりました。
そんな話は、また今度。