怒涛のゴールデンウィークも終わり、五月半ばのある休日。
「次週からはまた休みなくキャンプの週末が続くので、ここらで一息、山に登りたい!」という夫の提案により登山をしたのでした。
初めての場所へ行くのが大好きな夫らしく、やはり初めて名前を聞く山をチョイス。
「標高366メートルと低山でありながら、山頂からの景色が大変よい」との情報を入手し、子どもたちと私は(いや恐らく夫自身も)いつもの通り詳細のわからぬまま、とりあえず登山ができる準備をして車に乗り込みました。
晴天の予報のはずが、車窓から見えるのは分厚い雲に覆われた空。山が近づくにつれて暗くなっていくのは気のせいか。不安な気持ちを抱えたまま登山口に到着しましたが、既に駐車場が満車で、少し先の森林公園の駐車場に車を停めることになりました。
車を降りて登山口まで引き返していると、早速「まだかな?」と息子。
「もうすぐだよ」と答えると、「もうすぐ頂上に着くの?」と娘。
「いやいや、登山口にもうすぐ着くんだよ。そこからがスタート。」
「えぇ~!」

インドア派にとっての登山とは
前回の3月初めの登山から2カ月以上も経っており、久しぶりの長歩きに抵抗感がある様子の娘。
娘はその朝も、「あんまり時間のかかる山はきついから、この前みたいに軽く登れる山がいいなぁ」と言っていました。(前回は1時間程で登頂できる山で、私にとっても今までで一番楽な登山でした。)
恐らく娘は、登山そのものに魅力を感じているというよりも、家族揃って楽しめるアクティビティとして、その時間を愛しく思っているのでしょう。
私にも似たような感覚があり、娘のその気持ちが何となくわかります。
もともと外に出ること自体を欲しているわけではなく、気の置けない人と過ごせるなら場所はどこでも構わない。インドア気質で人並みの体力を持ち合わせていないため、「さぁ、体を動かそう!」というテンションに出くわすと思わず身構えてしまう。しかしいざ外に出てみると想像以上に気持ちよく過ごすことができ、「誘ってくれてありがとう。ひとりではこんな時間は過ごせなかった!」となります。
私にとって登山はまさにそんな感じ。
山に登るのは楽しいし健康的な時間を過ごせますが、休みの日にひとりで登山をしようと考えたことはありません。もちろん安全面の問題もありますが、私は登山そのものがしたいわけではないのでしょう。
キャンプでも同じく、ソロキャンプをしたいと思ったことはありません。
となると、私にとっては「家族揃ってできる」ということに意味があるようです。
逆に、映画や買い物にはひとりで出かけます。
映画や買い物そのものが目的なので、誰かと一緒だと付き合わせたり待たせたりするようで落ち着きません。(子どもの見たい映画や、子どもが自分で選びたい買い物に一緒に出かける場合は別です。)
急登にへこたれそうになりました
話が逸れましたが、その日の山は登りがとても険しく、私の前を歩く息子がふらついて何度後ろに倒れてきたかわかりません。自分の腰の高さほどある段差をひとつずつ登る息子が、体重移動をし損ねて後退すると、私もそのまま一緒に落ちてしまいそうでドキドキしました。
ちょっと休憩したいと思っても、進めど進めどそんなスペースはなく、不安定な場所で水分補給をするしかありません。
珍しい植物を見つけた娘と夫が「ほら、見て!」と前の方から背後を指して言っているのですが、こちらは息子の背中を支えるので精いっぱい。振り向いたり意識を他に向けたりする余裕もなくて、「そこで止まらないで! 進んでくれないと落ちる!」とつい真顔で叫んでしまいました。
そんな私の一言が生み出した険悪なムードと、どこまでも続く急登に4人の心がしおれかけた頃、「あれ? ここが頂上じゃないよね?」というような丘の上に出てきました。
久しぶりに踏む坂道じゃない地面にありがたみを感じながらも、木々に囲まれたその場所の「ここじゃない感」が半端ありません。
しかし、今いる場所が一番高いのです。前にも後ろにも下る道しかありません。
恐る恐る視線を移すと、傍らにそびえる高い山。
登って来た方向からは見えませんでしたが、そうです、こちらの山が本物のようです。
このタイミングで、この近さで見る山頂って、ものすごく高く感じるものです。
隣の山から縦走するような登山道では、「だいぶん疲れているけど、これから更にこの斜面を登っていくんだな。すごく急だし登れるかな」と不安になりますが、意外と登れるものですね。
とは言っても、私たちは低山専門ハイカーなので大した高さではないのですが。

登りつめた山道を別の方角に下り始めました。
標高が下がることがもったいないような気持ちで、でもあの地獄の急登から解放されて軽い足取りで気持ちを新たに進みました。
しばらくしたら道はもちろん登りになり、子どもたちが大好きな鎖場に出くわしました。
雨上がりで滑りやすい岩を鎖を頼りに登っていきます。
息子が語る登山の醍醐味
そんな道を抜けるとあっという間に山頂に到着。
そして、本当に「標高366メートルと低山でありながら、山頂からの景色が大変よい」と感じました。
この低さで、この景色!
これまで登った山では、山頂からは海や平野を望むことが多く、街が見えたとしても遠くに小さくといった感じでした。しかしこの山では、街の様子が近くにくっきりと見えて、都市部の知っている建物がたくさん。ジオラマを見ているようでした。

息子は、「いやぁ~! 登山って、登っている時はきついなぁって思うけど、山頂からの景色を見たら、頑張ってよかったぁって思うんだよねぇ! いい景色! 頑張ってよかったよね、ねぇ〇〇ちゃん!」とお手本みたいな台詞で娘に同意を求めていました。
娘の方をチラリと見ると、まんざらでもない顔をしていました。
子どもたちは持参した双眼鏡であちこちを眺めて、新幹線や電車を見つけたり、訪れたことのある観光名所を探したりして楽しんでいました。
今回も持参した簡単弁当を登山効果で美味しく食べて、1時間ほどゆっくりと山頂での時間を楽しみました。大きな黒いアゲハチョウ、見たこともない真っ白な薄い羽根のチョウがひらひらと舞っていたのが印象的でした。
初めは晴天でないことを嘆いたものの、山頂には日光を遮るものがなかったので、直射日光を浴びずに済んでありがたく感じました。
締めはBBQと庭キャンプ

下りは、途中の分岐を森林公園方向へ折れ、緩やかな道で直接駐車場を目指すことにしました。
こちらは歩きやすい道だったので、危険な思いをせずに楽な気持ちで下山できてホッ。
駐車場に到着して靴を履き替えていると、ベンチでサックスの練習している人、親子連れ、夫婦連れ、赤ちゃんを連れて散歩している人などで森林公園は賑わっていました。
夜はBBQをしたいという子どもたちのリクエストに応えて、お肉を買い込み、久しぶりに庭でゆったりと夕飯を食べました。
更に、日が長くなり過ごしやすい気温となったので、小さなテントを庭に張って寝ました。
お風呂もトイレも炊事場もある、小さな即席キャンプ場。
登山のほどよい疲れで、ぐっすりと眠れた夜でした。



