マニキュア、ドレス、女の子だけのもの? ジェンダーを考える本

図書館で、『色とりどりの ぼくの つめ』という本に出合いました。

◆『色とりどりの ぼくの つめ』
  作:アリシア・アコスタ、ルイス・アマヴィスカ
  絵:ガスティ
  訳:石井 睦美
  光村教育図書(2022年

ベンは、マニキュアに彩られた自分の爪が大好きな男の子。
ところが、学校で男の子たちにその爪をからかわれてしまいます。

出版社のホームページでは、「ジェンダーを考える絵本」として紹介されていました。
娘も息子も、読みながらそれについて深く考えている様子はありませんでしたが、これを読んで私はあることを思い出しました。

ドレスを着た息子

それは、2年ほど前。
衣替えをしていると、娘には小さくなってしまったプリンセスのドレスを、息子が見つけたのでした。
それはジャージ素材の柔らかい半袖ドレスで、スカート部分にはオーガンジーのようなふわふわの薄い布が付いています。
誤解を恐れずに言うなら、いかにも『女の子っぽい』種類の服でした。

息子は「これ、かわいいねぇ」と、にこにこしながら広げて見ています。
そのうち、お風呂上がりにそのドレスを着るようになり、休みの日にはこればかり着たがるようになりました。

家ではもちろん、キャンプにも、実家にも、散髪屋にも、ピアノ教室にも、近所のお出かけにも、このドレスで出かけました。
保育園を除いては。

息子がドレスを着ていると、どこへ行っても最初は「お?」という顔をされます。
息子は超短髪というわけではないので、遠目で見ると女の子と思われた可能性もありますが、息子を知っている人は笑顔で「ちょっと~どうしたの~? かわいい恰好して! 意外と似合ってるじゃない」と優しく受け止めてくださいました。

当の息子は、好きな服を着て気分よく過ごし、その自分を楽しんでいるようだったので、取り上げる理由もなく見守っていたある日のこと。

「保育園に着て行きたいな」と息子。

これまで保育園にだけは着て行かなかったけれど、どういう思いがあったのかはわかりません。
息子なりに周りの反応が心配だったのかもしれないし、ドレスは特別な洋服だから、保育園に着て行く種類のものではないと考えていたのかもしれません。

「そうなんだね。□□くんが着て行きたいのなら着て行ってみたら。ただ、もしかしたら悲しくなるようなことを言われることもあるかもしれないね。それでも着て行きたい気持ち?」と聞くと、「着て行きたい。」とのことで、そのドレスを着て保育園に登園しました。
念のため、息子と一緒にTシャツと半ズボンの着替えをリュックの中に入れました。

保育士の先生方は、「わぁ、□□くん! かわいい、どうしたの?」と驚きながら息子を受け入れてくださり、最初は少しはにかんだ様子の息子でしたが、次第にいつもの様子に戻って、むしろ堂々と園舎の中に入っていきました。

その日は、さすがの私も息子の様子が気になりました。
しかし、夕方お迎えに行くと、いつも通りの元気な息子が出てきました。
「お友達もみんな、かわいいねーって言ってくれたよー」と嬉しそうにしています。
保育士の先生からも、特別な言葉はありませんでした。

それから何度かドレスを着て保育園に行きましたが、ある日、唐突にドレスでの登園は終わりを迎えました。
からかわれたのではなく、平和に。

スカートを履きなれていない息子にとって、ドレスは足さばきが難しく、遊ぶ時に危険だからという理由でした。
なるほど、ごもっともです。

活発に動く息子です。
ひらひらしたものが膝の周りにあったら、危ないですね。
その日、ドレスのまま保育園の遊具によじ登ろうとした息子が、スカートの裾に隠れた自分の足を認識できずに怖い思いをしたそうです。

それ以来、息子もやっぱりズボンの方が動きやすいと感じたようで、そのドレスは少しずつ忘れ去られていきました。
時々思い出して着たがりましたが、日に日に動きが激しくなっていく息子に、ジェンダー問題とは関係なく、純粋に動きにくくて危ないという理由からズボンを勧めるようになりました。
そして秋が来て、半袖のドレスは仕舞われました。

***

翌年の夏。
今年は何て言うかな? と思いながら衣替えをしていると…

ドレスには一切興味を示さずに、「大人のようにベルトの付いた半ズボンが欲しい!」の一点張りでした。
拍子抜けしたような、複雑な気持ちの私を置き去りにして。

あの年の夏限定の、ドレス姿の息子。
思いっきり着ることができて、よかった。
もうあのドレスは小さくなって着られないから。
息子の思いを潰さなくてよかった。
これからも色んな気持ちを聞かせてほしいから。

…そんな、懐かしいことを思い出した日でした。

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